1年⽬の「Fukuoka Wall Art Project」は、活動⾃粛で静まり返った街を元気づけようと、あるいは展⽰機会を失ったアーティストが⼒強く表現を試みようと、⼒強い、主張のある作品が多い印象でした。それに対し2年⽬の今年は、じっくりと時間をかけて作品制作に向き合いながら、⽇常の暮らしや⽣きることについて、静かに反芻している姿勢を多くの作品から感じることができました。
「毎⽇の暮らしをどのように紡いでいくべきか」「⼈の⽣や死とどのように向き合っていくべきか」──優秀賞の5作品はどれも、異なったアプローチで⽇常や⽣死に向き合い、その答えを静かにすくい取ろうとしているかのように感じさせる、甲⼄のつけがたいものでした。
全数把握の⾒直しが検討されるなど新型コロナウイルスへの向き合いは変化し、⽇常⽣活や習慣として浸透してきているように⾒受けられます。今回集まった作品はそうした変化を感じさせるもので、仮囲いに掲出された作品を⾒ながら、私たちの⽣活がどうあるべきなのか、いま⼀度問いに向き合おうと思います。
⼒みのないモノクロームの線描や滲みに、⽣命とそれが死に朽ちていき、また⾎⾁となる循環が表現されている。沈んだ抽象的な表現でありながら、何かを掴み取ろうと、ジッと鑑賞させられる⼒強さを持っている作品。
規則的に⾚と⽩の三⾓形が連続し、洞窟を照らす⽕と太陽の光が表現されている。⽬をこらすと線には歪みがあり、⼈の⼿によって描かれているあたたかみを感じることができる。
鮮やかな⻘がスピード感のある筆触で積み重ねられながら、⼀つひとつの⾊が丁寧にキャンバスに置かれていく。⽇々の⼩さな判断や⼈との交流といった刹那の連続で、⼈⽣が築かれていくことを思い出させてくれる。
福岡の何気ない⾵景を丁寧に描き上げていく様⼦から、実直な街への愛着が伝わってくる。不確実に加速化する現代社会のなかで、⽇常を⼤切にすることや絵画の持つささやかな魅⼒を感じさせてくれる作品。
シンプルな⾊と線のイラストタッチの作⾵のなかに、複層的に意味を織り混ぜている、現代アートの良作。ベッドの上のタオルケットを抽象化することで、眠りと⽬覚めといった繰り返される⽇常から⽣と死を想起させる。
チーフディレクター 田尾圭一郎
(掲載五十音順)
(掲載五十音順)
Fukuoka Wall Art Project 運営事務局
MAIL:fwap@break-net.com
TEL:080-2115-0787(平日10:00~16:00)
安藤圭汰氏
1992年神奈川県川崎市生まれ。現在福岡市在住。
「生死/循環」を主なテーマとして、絵画作品を制作しています。
2019年のインドネシア滞在をきっかけに、日本国外の宗教観/死生観と日本国内の仏教観を混ぜ合わせた主題の作品制作を行っております。
[主な活動歴]
[出演]
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応募の作品は、赤という一つの色で構成していますが、赤には多くの意味を込めて制作をしています。
その中で特に赤い色は、洞窟の暗闇を照らす炎を表し、余白の白は明け方洞窟のさす陽の光を意味しています。
キャンバスの上には赤い色を塗ると同時に白い余白が生まれます。
暗闇を照らす灯りと夜明けにみる陽の光が同時に立ち現れることになります。
それらが幾度となく画面上に繰り返しています。
その様を人類の歴史になぞらえています。
またロマネスク時代には、人々は光を頼り生きていたと聞きます。
光=希望だったのです。
赤い色に希望を込めています。つまり『希望の集積』とも言えます。
そして三角形は、風を表しています。
三角の形が少しカーブしているのは、ヨットの帆を模しています。
閉塞感漂う現在の空気・雰囲気を風で吹き飛ばし,前に進みたいという強い願いがあります。
最後に世界に平和を、そして芸術文化の交流を、です。
神園宏彰氏
現代美術で何か社会に貢献出来ないかという強い思いを持ちながら制作をしています。
主に抽象絵画・写真・立体作品を作り発表をしています。
私の絵画作品は、抽象画です。綺麗に描いているとか、イラストレーションの様に人物の顔や姿や、生き物、植物とか等具体的な形が見えるといった類の物ではありません。
頭に浮かんだ考えアイデアをコンセプトに昇華させて二次元の絵画に転写しています。
そのコンセプトがとても重要で作品の一部いや半分を占めていて、両者が合わさって作品になります。
人は何故絵を描くのかをテーマに制作をしてきました。
やっと自分なりにその答えが解ってきました。
それらの答えをいきなり全部一度に表現するのでなく少しづつ作品化しています。
人は何故絵を描くのか?その答えを私に求めるのだけでなく
観た人がそれを考える切っ掛けとなるように作品の中に思いを込めています。
提案の様なものかもしれません。
立ち止まって考えること、これこそが現代美術の大きな役目だと信じています。
[略歴]
具体美術運動の流れをくむ現代美術作家
[主な個展]
[主なグループ展]
東京都三鷹市市民ギャラリー
兵庫県芦屋市美術博物館
他の収蔵作家に デヴィッド・ホックニー、ジャスパー・ジョーンズ、など
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何層にも重なる絵具から人生の軌跡のようなものを感じた。私は記憶の海と呼んでいる。ひとつひとつの積み重ねが「なにか」になっていく様子を表情豊かな青を用いて表現している。
どんな時間を重ねていくかによって、人生の行き先が変化していく。日常を丁寧に楽しんでいきたいと願いから今回の先品「刹那」を制作した。
銀ソーダ (Ginsoda)氏
1995年 福岡県福岡市生まれ
2018年 九州産業大学 芸術学部デザイン学科 ビジュアルアート領域 卒業
2021年 一般社団法人DGY 理事 就任
記憶は断片的で人生の時間は有限である。人生において自分の中に何が残っていくのか興味を持ち、「記憶と時間の可視化」をテーマにその残っていく『なにか』を作品として表現している。
何層にも絵具を積み重ね、その絵具から現れる像を俯瞰することで様々な気づきがある。空や海のように、物事の向こう側を意識させる表情豊かな青を使い”Ginsoda Blue”シリーズを中心に様々な時間軸の作品を発表している。
地元でもある福岡箱崎の銭湯跡地「大學湯」の建物保存利活用PROJECTメンバー(一般社団法人DGY)として運営も行い、活動拠点としている。
[個展]
[グループ展]
[アートフェア]
[受賞歴]
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小島拓朗氏
1994年 生まれ
2016年 崇城大学 芸術学部美術学科洋画コース卒業
2018年 佐賀大学大学院 地域デザイン研究科地域デザイン専攻芸術デザインコース 修了
[受賞歴]
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鈴木淳氏
写真撮影:鶴留一彦
1962年 福岡県北九州市生まれ
1987年 熊本大学理学部生物学科卒
現代美術家として、身の回りにある既製品を用いたインスタレーションや、写真、映像、パフォーマンス、テキストなど様々な手法を用いた表現活動をしています。
それらの作品や行為は、普段の生活で見慣れた風景や「もの」「こと」に対して、ユーモアやアイロニーを含め、場の特性や日常に潜む違和感を引き出し、異化しています。
[個展]
[グループ展]
[受賞歴]
[パブリックコレクション]
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今回の作品は、循環の狭間を表現しております。生物の瞬間を一枚の絵の中に描き続けることで、生まれてから死後土に還るまでの確かな匂いを現わそうと思いました。